ドイツプログラム●『Himmelfahrt (One Way Ticket) / 片道切符』 

himmelfahrt ●Himmelfahrt (One Way Ticket)
片道切符


監督:Ulrike Grothe
13:00 / ドラマ / 2003 / ドイツ

ポーランドで行われる祖父の葬儀に向かっている、性格が全く違う兄弟と祖母。
列車で国境を越える直前に、なんと祖母が急死してしまう。
彼女の最後の望みを適えるため、祖母の遺体を「密輸」することに決めた兄弟。
けれど、次から次へと邪魔が入って・・・

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題名からも分かるようにこの作品の舞台は列車です。
ほとんどのシーンが列車の中で繰り広げられます。
主人公のとある兄弟とその祖母は、夜行列車に乗って
ドイツを出発し、ポーランドの国境を越えます。

日本に住んでいれば、このように列車で国境を越えることは
なかなか想像がつきにくいことではないでしょうか?

私自身もこの「簡単に国境を越える」という、
日本人にとって驚くべき体験をしたことがあります。
数年前のこと、ドイツをバス観光で回っていたときのことです。
「いま、このバスはオーストリアを走っているんですよ」

ガイドさんのひと言に思わず窓の外を必死で見回してしまった私。
さっきと変わらぬ風景が広がるばかりでした。
国境らしきものを通った覚えは無かったし、
ましてやパスポートを提示しろと言ってくる役人もいなかったのです。

ヨーロッパなどの陸続きの大陸では、このように列車や車などで
国境を越えるのはあたり前のことになっているようです。
ユーロという共通通貨も作られEU化はますます進んでいます。

この作品中でも、「あたり前の越境」シーンが見られます。
ただ、主人公たちはある理由のため、普段は何の心配も必要としない越境に
ちょっと神経を使うことになりますが・・・。


ドイツプログラムより…
上映日時:8/3(土)18:00〜・8/4(土)14:30〜


SSFF & ASIA 2007 受賞作品B●『Who Killed the Stanley Black? / 誰がスタンリーブラックを殺したか?』 

Who Killed the Stanley Black ●Who Killed the Stanley Black?
誰がスタンリーブラックを殺したか?


監督:落合信人
10:00 / ドラマ / 日本 / 2006

スタンリーブラックという怪物に何度も殺されている男。
ある日、その男は金髪で赤い服を着た女に出会い、
そして女を愛するようになる。しかしその女が現れるときは
必ずスタンリーブラックに殺されるときだった。

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キーワードは3つ。
「スタンリー・ブラック」、「赤い女」、そして「死」。

制限時間は10分。
落合信人監督との駆け引きを楽しむ。
しかし彼は、私に結論を推理する時間をくれなかった。
ストーリーは唐突に、そして静かに幕を閉じた。

ミステリー小説の第1章と、最終章だけを読まされた気分はするが、
もどかしく思う気持ちは無い。
ただただ考えさせられる。そう、題名の通りに。
「誰がスタンリー・ブラックを殺したか?」

「私」はスタンリー・ブラックという名の
怪物に何度も何度も殺される。
そして殺されるたびに、顔も見た事の無い赤いドレスの女に出会う。

殺されたら出会う。出会う為に殺される。
「私」の中で、死と愛は同じ意味を持つようになり、
抜け出す事の出来ないループを彷徨う。

「え!?」

これが私の第1声だった。
頭を抱えた。
謎が多い作品である事は確かだが、
伏線が張り巡らされているとか、トリックがある訳ではない。
必要な情報は明確に提示されている。
映画が終わった後も、落合監督との駆け引きは続く。

落合監督のメッセージを解読出来た人は私に教えて欲しい。
「誰がスタンリー・ブラックを殺したか?」
サジを投げるようではあるが、色んな角度からの意見を聞きたい。
久しぶりにそう思わせる作品である。


SSFF & ASIA 2007 受賞作品Bより…
上映日時:8/4(土)20:30〜・8/5(日)18:30〜


チルドレンプログラムA●『D.I.Y』 

D.I.Y ●D.I.Y

監督:Royston Tan
5:45 / ミュージカル・ダンス / 2005 / シンガポール

いろんな人々の、それぞれのなんてことない日々の生活風景
― 実は、全てがつながっていた。
…人間たちが奏でるちょっと不思議な音楽。

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世界の人口は現在66億人以上。
それぞれ違った日常を過ごしています。
でも、ふとした瞬間に、ふとしたことが
世界中でシンクロしていたら、素敵ですよね。

今回紹介する「D.I.Y」は、
人と人とが「音」で繋がる。
そんなお話です。

日常生活には色々な「音」が存在しています。
それは美しい声色だったり、ただの喧騒だったりと様々。
でもこの作品はそんな無機質な「音」で世界を一つにしています。

監督はシンガポールのRoyston Tan。
これまでにシンガポール国際短編映画祭最優秀短編映画賞を獲得したり、
米タイムマガジン社「Top 20 Asian Heroes」に選ばれるなど、
数多くの功績を持っています。

プログラムに選ばれた「D.I.Y」は2005年に作られました。
5分45秒の作品の中でセリフは一切ありません。
ただ色んな人が奏でる音だけ。
でもそれだけで不思議と心地良いリズムが生まれ、
メロディーが生まれる。

登場人物もさることながら、その「音」の種類も実に様々。
水槽を指でつついて奏でるメロディー。
腹筋中の激しい呼吸のリズム。

そういう何気ない「音」が繋がる。
オーケストラが奏でるシンフォニーのように。
圧巻のフィニッシュ。
スタンディングオベーション。


チルドレンプログラムAより…
上映日時:8/4(土)13:00〜


SSFF & ASIA 2007 受賞作品プログラムA●『Never Like the First Time! / 「初めて」は一度きり!』 

never.jpg ●Never Like the First Time!
「初めて」は一度きり!


監督:Jonas Odell
15:00 / アニメーション / 2006 / スウェーデン

4人の「初めて」の物語。それぞれの体験は、コメディ、悲劇…
とさまざまで、懐かしかったり恥ずかしかったり、恐ろしかったり。
だけど4つのストーリーに共通すること…
「初めて」はやっぱり特別!

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今回紹介する作品は、
見ていて笑みがこぼれたり、ちょっと切なくなったりする作品です。
個人的にもお気に入りの作品の1つと言えると思います。

SSFF & ASIA 2007 インターナショナル部門で
審査員特別賞を受賞した作品。
スウェーデン人のJonas Odell監督による作品です。
作品時間は15分と短く、簡単に見る事が出来ると思います。

さて、この作品は「初体験」について語る4人による
オムニバス作品となっています。
それぞれ違ったシチュエーションでありながら、
緊張している様子などが手に取るように分かると思います。
十人十色という言葉がありますが、この作品はまさにそれで、
見ていて飽きが来ない作品と言えるでしょう。
実写ではなく、アニメーションと背景を組み合わせた
優しいタッチに仕上がっています。

友人にそそのかされて、焦りを感じつつ「初めて」を求める青年。
愛する彼氏と、徐々に「ステップ」を追って、
「初めて」を経験する可憐な少女。
思わぬ事態により、「初めて」を失ってしまったかもしれない少女と
トレンチコートにまつわる悲しいストーリー。
美しい過去を雄弁と語る老紳士。
みんなそれぞれ「初めて」のカタチは違うけれど、
その一つ一つには決して忘れる事が出来ないドラマが存在します。
 
性描写・暴力描写のマークがあるために、
少し身構えるかもしれません。
しかし実際の内容は青くて甘酸っぱく、
見ていてちょっぴり恥ずかしいかもしれません。
4人それぞれの「初めて」の話に耳を傾けてみて下さい。


SSFF & ASIA 2007受賞作品プログラムAより…
上映日時:8/4(土)18:30〜 / 8/5(日)16:30〜


チルドレンプログラムB●『There was the Moon and a Fox / 月を盗んだキツネ』 

月を盗んだキツネ ●There was the Moon and a Fox
月を盗んだキツネ


監督:Babak Nazari
12:30 / アニメーション / 2005 / イラン

月に心奪われた一匹のキツネが、空から月を盗んだ。
元の場所に戻さないと大変なことになる!

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“cry for the moon”: 得られないものを欲しがる,不可能なことを望む

“moon”には「不可能なこと」という定義もあり、
日本にも「月を欲しがる子供」という言葉の通り、
月は手の届かない物・存在・望みの例えにもなっています。

しかし!
この映画では手が届いてしまったのです!
頑張って、頑張って、頑張って手に入れた月。
本来決して手の届かない存在は一筋縄ではありません。
手に入れてからが難しいのです。
さてどうしよう?

子ギツネは月を手に入れてから、
今度は一生懸命に月の気を引こうとします。
どうやって?
おいしい(?)お料理は?病気のフリをしたら?・・・

この子ギツネの様に必死になって
追い求める「月」、あるでしょうか?
あるとしたら、必死になって
あの手この手を使って追いかけていますか?
時にはがむしゃらになってみるのもいいかもしれません。
子ギツネの様に。

月の気を引こうと奮闘する子ギツネが笑いを誘います。

チルドレンプログラムBより…
上映日時:8/5(日)11:00〜


ドイツプログラム●『Epilog (Epilogue) / エピローグ』 

epilog ●Epilog (Epilogue) / エピローグ

監督:トム・ティクヴァ
12:00 / ドラマ / 1992 / ドイツ

自分自身の記憶に裏切られた男の物語。

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今年のドイツプログラムは熱い!

中でも印象に残ったのは、
小説の様にストーリーを展開させて、驚きのエンディングまで突っ切る、
「Epilog(Epilogue) / エピローグ」。

監督は昨年公開の「パフューム」で
有名になった、トム・ティクヴァ。
興奮さめやらぬ内に、この作品を紹介します!


ドイツ出身のトム・ティクヴァ監督は
11歳の頃から映画作りを始めた。
自主制作の映画を名刺代わりとして、数多くのフィルム・スクールに
作品を提出するも、受理されることは無く、
ベルリンの映画館で8年間、映写技師として働いたという経歴を持つ。

そんな彼を一躍有名にしたのが、
記憶に新しい2006年公開の映画
パフューム ある人殺しの物語」である。

18世紀のパリを舞台にした小説
「香水 ある人殺しの物語」の映画化であるこの作品では、
750人を超える過激な性描写が話題となり、
テレビCMでは、問い合わせが殺到したため、
そのシーンが入っていない別バージョンに
CMを差し変えるなどの逸話が生まれた。

映画「パフューム」以前の1992年に撮られたのが、
今回ドイツプログラムに選ばれている、
「Epilog(Epilogue)/エピローグ」である。
題名のエピローグとは
「詩歌・小説・戯曲などで、結びの部分(広辞苑)」
とされているが、その名の通り、
映画の結末にこの作品の全てが凝縮されている。

ストーリーはまず結果から始まり、
そこに至るまでの過程を回想するという、
時間を逆上るものとなっている。
このような内容の映画やドラマはいくつかあるが、
彼は私達の期待を大きく裏切ってくれる。
結論を言わずにそれを説明するなら、
パラレル・ワールドと言った感じだろう。

一つの物語で同じ時間に二つの物語が存在する。
それがこの「Epilog(Epilogue)/エピローグ」である。

作品時間は12分と短いが、
彼らしいドンデン返しの様なエンディングが待っている。
パンフレットには「自分自身の記憶に裏切られた男の物語」
と書いてあるが、この作品のミソは裏切られるという事だろう。

エンディングを推理しながら見るのもまた、
面白いのではないだろうか。

ドイツプログラムより…
上映日時:8/4(土)14:30〜


チルドレンプログラムA●『Chess / チェス』  

chess ●Chess / チェス

監督:Pernilla Hindsefelt
5:00 / アニメーション / 2006 / スウェーデン

古い図書館の片隅で、対戦の準備をしている
チェスの駒たち。黒と白、勝つのはどっち?

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人気のない、静かな図書館。
チェス盤の上では、ただならぬ緊張感。
白い駒と黒い駒が向かい合い、
今にも戦いが始まろうとしている。
表情豊かな駒たちから伝わる緊張感に、
大人でさえも思わず息を呑むはず。

敵対している黒い駒の女王が、
白い駒の王のユーモアや優しさに触れ、
心開いていくシーンで思い浮かんだのは、
アフリカン・アメリカンの彼と結婚した友人のこと。

黒人との国際結婚は、日本ではまだまだ少数派で、
好奇や偏見の目に晒されることも多いという。

それは彼女の娘にも向けられ、
今は側で両親が守ってあげられるけれど、
幼稚園や学校に通い始めると、
両親の目も行き届かず一人で戦わなくてはならない。

子供の言葉はストレートで、
時に傷つくこともあるかもしれない。
「なぜ肌の色がチョコレート色なの?」
「あなたは日本人?」
そう聞かれる度に堂々と胸を張っていられるよう、
誇りを持って生きていけるよう、
ちゃんと娘に話をしなければと、彼女は言う。

そんなとき、このショートフィルムが教えてくれるかもしれない。
セリフのないこのショートフィルムなら、
子供達にも分かりやすい。
同じ人間であること、愛の結果私たちがいること、
子供達がそう理解することで、
少しでも偏見がなくなればと思う。

世界から紛争がなくなるきっかけは、
こんな小さなところから始まるのかもしれない。

チルドレンプログラムAより…
上映日時:8/4(土)13:00〜